俺様社長と付箋紙文通?!
そんななか、ふぉーん、という軽い音がエントランスパークに響いた。そしてハーモニカの音色はジングルベルのメロディを奏でる。寒さに耐えて列に並ぶお客さんの顔もほころんだ。ナイス、ウォール社長。


「ハニー、グッドニュースだ。開発の話が流れそうだよーん」
「え? なくなった、ってこと?」
「そうだよーん。これであったか☆ドーナツも続けられる(ふぉーん)。クリスマスプレゼントだぞ(ふぉーん)」


ほんとに? ほんとうに?、と信じられない気持ちでウォール社長を見上げる。それを察知したウォール社長はうんうんとうなずいた。思わず私とウォール社長は抱き合って、石畳の上をぴょんぴょん飛び跳ねた。

でも、どうして? 設楽シャチョーは開発は止められないって言ってたはず。

そう考えていると、向こうに背の高い男のひとが見えた。設楽シャチョーがやってきた。私の心臓が跳ねる。来た……素直にうれしいと思う自分とどう接していいかわからなくて困る自分がいる。

列の最後尾に着いた。なんだか今日はいつもと違う。いつものシャチョーならお行儀よく並んだりしない。

私は平常心という単語を心の中で連呼しながら接客を続けた。



*−*−*

俺はドーナツを買うふりで列の最後尾に並んだ。顔の向きはなるべく変えないようにしてあたりをうかがう。伊達眼鏡、スーツ、男。ドーナツを買うのは女ばかりだから必然的にエントランスパークは女性でいっぱいだ。このなかから男を探す。

いた。あのケヤキの木の下だ。じっとサキホを見つめている。ニヤニヤ笑いながらだ。けしからん。俺のサキホを俺以外の男が見るていことは許しがたい行為だ。いかん。つい、ガン見してしまう。このまま駆け寄って取り押さえたいが、それではこちらが一方的に暴力をふるうことになる。サキホには申し訳ないが、襲い掛かろうとした既成事実が必要なのだ。これはつらい。忍耐力との勝負だ。

徐々に列の前のほうになっていく。あと5人で俺の番だ。ドーナツの陳列台がそこに見えいている。きょうはさっぱりとオレンジとレモンのシロップ漬けが散りばめられた生地にしよう。トッピングはホワイトチョコだ。
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