俺様社長と付箋紙文通?!
「く、苦しい……いてててて……離せ」
「離すわけないでしょう。堪忍なさい」
「い、息が……苦し……」
「まだ抵抗するの? ならしょうがないわね」


宮下は両手で握っていたネクタイを片方にし、右手で後ろ手にして奴の股間へと伸ばした。


「☆★※@%$!§▽■!!」


急所を握りつぶされ、声にならない悲鳴を上げる。ご愁傷様なことだ。

ふたりのまわりをブルーや私服の警備員が群がり、取り押さえた。その塊の中からパンパンと手の砂を払いながら宮下が現れた。ふん、と鼻を鳴らして。


「まったく、ここの警備員はでくの坊なんだから」
「大丈夫か」
「当たり前です。さあ設楽社長、彼女を医務室へ」


振り返るとサキホはドーナツカーの前でうずくまっていた。



*−*−*

男に襲われそうになって私は腰を抜かしてしまった。すんでのところで設楽シャチョーに助けてもらった。向こうでがやがやと声がする。シャチョーは大丈夫だろうか。

立ち上がろうとしたとき、目の前に手のひらが差し出された。大きな手。見上げれば設楽シャチョーだった。


「大丈夫か?」
「はい。シャチョーは?」
「大丈夫だ」
「あの男のひとは」
「宮下が取り押さえた。警察が来たら引き渡す」
「ほかのひとにケガは」
「いまのところなさそうだ。立てるか?」
「はい……」


私は素直にシャチョーの手に自分の手を重ねた。私の手を握り、ゆっくりと引き上げるシャチョー。温かくて大きな手だ。胸がキュンとした。

つないでいた手が離れ、その手が私の肩に回る。そっと抱き寄せられて私は歩いた。ムスクの香り、汗の匂い。どうしていいかわからなくて地面を見て歩く。石畳から横じまの金属になり、自動ドアの溝を踏み越えた。白いリノリウムの床、その奥の管理等に続くもうひとつの自動ドアを抜ける。だめだ、ドキドキする。そんな自分の気持ちを抑えようと必死に違うことを考えようとするけど、無理だ。こんな至近距離でこんなに優しくされたら。

この前も入った医務室。白い壁に白いカーテン、ベッド。設楽シャチョーは私を優しくエスコートしてベッドに座らせた。彼も私の横に座る。静かな医務室、互いの息づかいだけが聞こえる。


「どこか痛むところは」
「尻もちをついたときに手のひらも地面について、かすり傷ですけど」
「見せろ」
「大丈夫です、このくらい」
「いいから」

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