少女に野獣。
ーーーーーーーーーーーーー


「おいで」


まだまだ冷える2月


ペタペタと素足でリビングまでくれば、ビシッとしたスーツからラフな服に着替えた糸夜さんに呼ばれた


「風邪ひくだろう?」


"ちゃんと乾かさないと"と、ドライヤーを当ててくれる


お風呂上がりは自然乾燥派の私は、いつも敦士さんに怒られる


「ジッとしてな」


振り返ろうとすれば、顔を戻された


芦屋さんが帰った後、何処かへ電話をした糸夜さんは仕事を切り上げて、今朝抜け出したこの部屋へ再び連れてこられた


どうやらここが糸夜さんのお家らしい


社長室の更に上の階


ここへ来るには社長室を通らなければならない仕組みらしく、誰しもが自由に行き来できるわけではないと、さっき教えてくれた


髪の毛を触られていると、心地よくて瞼が重くなってくる…


「もう少し我慢しな」


程よい温風が更に眠気を誘う


本当は、今朝からずっと気怠くて、、


「美依恋」


乾かし終わった糸夜さんに、"眠たい"と口で伝えれば、久しぶりに見る優しい表情で髪を指で梳かしてくれた


今更ですけど、私は糸夜さんの事を何も知らないんですね…?


こんなに大きな会社の社長さんだと知ったのも、つい昨日の事


どんな仕事をしているのかも知らない


よくも知りもしないのに、"怖い人"だと決めつけた自分が何だか幼稚に思えて…


「ちゃんとつかまらないと、落ちるよ」


軽々と私を抱えた彼に、落とされまいと首へ抱きついた


私、、


糸夜さんのことが知りたい


昨夜の事も含めて、あの行動の意味も


逃げ出すのは、それからでも遅くはないはず…




< 68 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop