君と、ゆびきり
エロ本を買ってこいだの、夜中に病院を抜け出す手伝いをしろだのと、散々迷惑をかけられてきたのだ。


「そんな顔しないでさ」


「そんな顔にもなるでしょ」


今までの行いを忘れてしまったのかと言いたくなる。


「2人きりの入学式をしよう」


お願いを聞き入れるなんて一言も言っていないのに、風はそう言い出した。


あたしは風を見て目を丸くする。


「2人だけの入学式?」


「そう。俺と千里だけが通う中学の入学式」


……なに言ってんだ。


ハッと笑いを漏らした。


あたしと風だけの中学校。


あたしと風だけの入学式。


考えると、あたしの顔から笑顔が消えた。


風はこの頃から感づいていたのだろうか。


自分の命が、高校卒業の年齢までもたないかもしれないと言う事を。
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