拾われた猫。Ⅱ
数日後、彼女は帰っていった。
勇とトシだけにその事を伝えて、左之には何の報告も無かったらしい。
左之はほんの少しだけ遠くを見るような目をしていたけど、文句も言わずに笑っていた。
左之なりに彼女の決意を読み取ったのだろうか。
屯所の中も次第に落ち着いていった。
私もまた暇な日常が始まった。
「……」
「……」
トシの部屋は相変わらず静かで、ノアは私の膝の上に座っていた。
「暇なら茶でもついできてくれ」
「………分かった」
「なんだ今の間は」
「別に」
軽口を言い合えるような日常も帰ってきた。
台所に行くと、勇がいた。
「香月くんか。
トシの茶かい?」
コクリと頷くと、「ご苦労様」と穏やかな笑みで私を撫でた。
湯のみに入れてあった水をコクリと飲むと、もう一度笑いかけて出ていった。
どうやら、勇は喉を潤しに来たらしかった。