拾われた猫。Ⅱ
トシにお茶を運んだ後、仕事もなく暇になった。
またボーッと窓の外を見ていると、視線に気づく。
視線を合わせるけど、じっと私を見たままだ。
「……トシ?」
「お前」
不安になってかけた声と当人の声が混ざる。
私から伝えることは何もなく、トシの次の言葉を待つことにした。
「…今、道場に俺の隊がいる。
普段は鍛えてやれねぇ。
代わりにお前が行って、稽古をつけてやれ」
「は?」
素っ頓狂な声が出たけど、トシはそれ以上何も情報を与えない。
つまりそういう事なんだろう。
私はノアを肩に乗せて、道場に向かった。
木刀がぶつかり合う音。
いつも来られないトシに期待はせずに自分たちで練習しているようだった。
誰かの稽古なんかした事などなく、どう声を掛けていいものか悩んでいた時だった。