拾われた猫。Ⅱ
「翔」
夕食が終わり、自分の部屋に帰ろうとする背中に声をかける。
いつものヘラヘラ顔で振り返る。
「ちょっと話があるんだけど、部屋行っていい?」
「え、俺の?!
雨さんなら大歓迎っすよ」
わざとらしく言ったその言葉について行く。
けれど、今日目を覚ましたばかりの体は早くは動けない。
そんな私に見兼ねたのか、私の横に立ったと思えば足の後ろに手を添え、横抱きにされた。
「うわっ、ちょっと…」
「雨さん、遅いんすもん」
ケラケラと笑いながら、軽い足取りで歩く。
ほかの人たちが居ないだけマシ…。
翔は新八たちみたいにガタイが良いわけじゃない。
それでも私を支えられるのは、やっぱり男女の差だろうか。
部屋につくと、やっと下ろしてもらえた。