拾われた猫。Ⅱ
障子を閉めて私の向かいに座った。
「あ、お茶とかいります?」
「お構いなく」
いつも通りの翔に肩透かしをくらう。
ニコニコと私の顔を見る彼は、私の話を待っているようだ。
「…翔は私と同じ所から来たの?」
突然の質問だったはずなのに、動揺することなく笑っていた。
まるで知っていたみたい。
「そうっすよ」
ドクンと心臓が変に跳ねた。
自分が決めた事だったのに、『そうじゃないといい』と思っていた。
今の私なら、『違う』と一言言われれば簡単に信じただろう。
私は唇を噛んで、両手で服をぎゅっと握りしめる。
「賢い雨さんなら気づいてると思ってたけど、絶対に聞いてこないと思ってたっす」
そこに人懐っこい笑顔は無く、伏し目がちな瞳は冷たい。
少年がするような表情とは思えなかった。
「雨さん、帰りたいんすか?」
彼の目は私を射抜く。