イジワル社長は溺愛旦那様!?
「――あ!」
言われて気が付いた。
湊の京都出張に同行したとき、空港のラウンジで声を掛けられたあの男性だ。
「空港のラウンジでお話ししましたね」
突然のことに驚いたが、湊の秘書をしていると、こうやって声を掛けられることもないことはない。
夕妃はよそゆきの笑顔を浮かべて、うなずいた。
「ええ、そうです。よかった思い出してもらえて」
あの時もそう思ったが、やはり華やかな男だ。
原色の花のように鮮やかな雰囲気を身にまとっている。
「またどこかでと言いましたが、本当にまた会えるとは思わなかったな」
彼はテイクアウト用の紙袋を持っていた。
本当にたまたま通りすがっただけなのだろう。それをちょっとおどけるようにして持ちあげる。
確かに男の言うとおりだ。こんな偶然の再会、なかなかあるものではない。
そして仕事モードではない、完全にオフの自分が発見されるとは思わなかった。
どちらかというと童顔で、あどけない顔をしている夕妃は下手をすると今でも大学生に間違えられることもあるのだ。
「お仕事ですか?」
「ええ」
そして彼は胸元から名刺ケースを取り出すと、一枚差し出してきた。