イジワル社長は溺愛旦那様!?

「あんたの弟なんだから、ちゃんと面倒みなさいよ」


母は早口でそう言い放つと、呆然と目を丸くする夕妃がとめる間もなくその場を立ち去ってしまった。


(私の弟……朝陽くん)


夕妃がこのファミレスに来た時から、彼はうつむきっぱなしでよく顔はわからない。

とりあえず目の前の冷えてしまったココアを飲み、それからうつむきっぱなしの弟を見つめる。


学費は払う。
生活費も多少渡す。
だけど一緒に住むことはできない。
私には私の人生があり、幸せになる権利がある――。


そんなことを一方的に聞かされている間、朝陽は窓際の席でじっとうつむいてテーブルの上のコップを凝視してピクリとも動かなかった。
異議も唱えず、ただそこにいた。

体は大きいけれど、まるで親とはぐれ、住処の穴から無理やり出された子熊のように見えた。


(なんて言ったらいいんだろう……)


つい最近、夕妃も父から再婚すると聞いて、家を出ることを決めたのだ。
正確には『出て行ってほしい』と言われたのだが。


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