イジワル社長は溺愛旦那様!?

(このご時世に、異色の箔押しフルカラーのパンフレットが重いっ……手がちぎれそう……!)


紙袋パンパンの資料をいったん整理したいと思いつつも、なかなかその機会が訪れない。

そのうち紙袋の底が抜けるのではないかと、ヒヤヒヤしながらブースを回っていたところで、同じく様子を見に来たらしい、顔見知りの某社の取締役と話をしていた湊が振り返って、夕妃を呼び寄せた。


「三谷君、このあとの予定、二時間ほどずらしてもらえますか」
「はい」


うなずきながら湊が話していた相手を見ると、同じようにどこかに電話しながら時間を作るよう指示している。彼の電話の向こうには、夕妃のような秘書がいるのだろう。
どうやら雰囲気からして、かなり込み入った話になっているようだ。

そして湊とその取締役はお互い時間を作るのに成功し、夕妃に先に社に戻るよう告げて、立ち去ってしまった。


(――先に帰っていいって……)


ひとり残された夕妃は、両手には大きな紙袋を持っている。

湊が一緒なら車をつかえるが、自分一人のためにさすがに車を呼ぶことはできない。


「はぁ……仕方ないか……」


夕妃は両手の紙袋を「よいしょ」と持ち直すと、ヨロヨロしながら会場の出口へと向かった。



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