イジワル社長は溺愛旦那様!?
最寄りの駅まではバスに乗り、それから電車でエールマーケティングへ戻る。
(紙ってどうしてこんなに重いんだろう……一枚一枚は軽いのに、束になるとずっしりだ……)
そんなくだらないことを考えつつエントランスに入ったところで、「あ、三谷さん」と、澄川に声を掛けられた。
どうやら彼も外回りから帰ってきたところらしい。
「重そうだね。上まで持つよ」
夕妃の手元を見た後、ひょいっと紙袋をふたつ奪い取ってしまった。
「えっ、ありがとうございます。助かります」
それからふたりでエレベーターに乗り込む。
ほかにも社員が乗り込んで、エレベーターはいっぱいになった。
「三谷さん、社長と例のエキスポ行ってたんだよね。どうだった?」
「ずいぶん盛況でしたよ。そういえばうちは出ないんですか?」
エールマーケティングはその名の通り、日本有数の化粧品会社であるエール化粧品から枝分かれしたマーケティング会社だ。去年設立されたばかりの若い会社だからこそ、積極的に新しい展示会に出て行くものだと思っていた夕妃は首をかしげる。
「いやー、そういうのは本社がねー」
澄川はそう言って、肩をすくめた。ふんわり濁されてしまったが、おそらく本社がいい顔をしないということなのだろう。