イジワル社長は溺愛旦那様!?
帰宅して、湊が好きなメニューをあれこれと作っていると、夜の九時を回っていた。
あのあと、湊が本社に行ったことは知っている。だが特に連絡がないので、おそらくもうすぐ帰ってくるはずだ。
(私ができることなんて本当に少ないけど、せめて湊さんがホッとできるような環境を作って出迎えよう)
そうやって、ベッドのシーツを変えたり、アロマをたいたり、お風呂に置くバスタオルをとっておきのものと置き換えたりしていると、帰宅を知らせるチャイムが鳴った。
夕妃は急いで玄関へと向かいカギを開ける。
湊だ。
「おかえりなさい!」
そしてそのまま抱き着いた。
「……ただいま、夕妃」
湊がにっこりと笑って、コート姿のまま夕妃を片腕で抱きしめる。
頬が近づいて、ふれる。
湊の頬は氷のように冷たかった。
(湊さん、冷たい……車使わずに、どこか歩いて帰ってきたのかな……)
家に仕事を持ち込まない、愚痴をめったにこぼさない、湊らしい頭の切り替え方だ。
だったら自分はいつも通り振舞うのが、一番いい。
夕妃は顔を上げ、そのまま湊の手からバッグを取ると、にっこりと笑った。
「お風呂どうぞ」
「ありがとう」