イジワル社長は溺愛旦那様!?

唇が触れ合うまでほんの数秒、夕妃が息を吸い込んだその時。

ピピピ……と小さな電子音がした。

すると湊はそのまま回り込むようにして唇を避けると、夕妃の頬にキスをする。


(へっ……?)


目を丸くすると、湊が顔を離してにっこりと笑う。そして夕妃を閉じ込めていた腕を引き、紳士的な笑顔を浮かべて手首に巻いているスマートウォッチに目を落とした。


「迎えが来たようです」


どうやら仕事らしい。
電子音は彼の時計からだったようだ。


(そういえば昨晩、スマホだめになったんだっけ……)


申し訳ないと思いつつ、そして急に夢から現実に戻ってきたような気がして、夕妃はうなずいた。


「だけど、あなたの残念そうな顔が見られてよかった」


(えっ、そんな顔してた!?)


思わず両手で顔をはさむと、湊がクスッと笑う。

言われてみればちょっと残念だったと思ったのは事実のように思う。

思うが、それを見透かされるというのが恥ずかしかった。


(私、顔に出すぎなんだろうか……)


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