イジワル社長は溺愛旦那様!?

からかうように、湊の手が、夕妃の頬にふれる。指が頬を撫でて、そして耳をつまんだ。


(あっ……)


もちろん不快というわけではない。


「耳も熱いね」


くすりと笑う湊の目は、まるで膜を張ったようにきらきらと濡れていて――。

夕妃は、持っていたペンを握る指に力を込め、それから自分の意志で、メモの上に文字を書いた。


【あなたとキスがしたい】


こんなことを自分で意思表示したのは、生まれて初めてだった。

流れ、流されて、もちろんある程度のことは自分の意志で選んできたつもりだけれど、結局自分の主義主張を通すには、それなりのバックグラウンドが必要だ。

自分のキャパシティー以上の大きな壁に立ち向かって、ぶつかるなんて、無駄でしかない。

結局最後に砕け散るのは、自分なのだから――。


(それでも私……やっぱり……)


近づいてくる湊の気配を感じて、夕妃は目を閉じる。


顔を傾けた湊が、夕妃の唇にキスをする。

最初は柔らかく、感触を確かめるように触れて、それから離れる。

目を開けると、じっと自分を見つめる湊と目が合った。

昨晩のベッドの上でのキスとは違う。

明るいリビングの明かりの下でするキスは、なぜかずっと煽情的に思えた。



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