イジワル社長は溺愛旦那様!?
湊は天井を見て、はぁ、とため息をついた。
「なんだかこういうの、俺らしくないな。誰かにペラペラと自分の気持ちを話すことなんて、今までほとんどなかった……すみません。聞き苦しかったでしょう」
そしてくしゃりと髪をかきあげる。
その横顔はいつもの余裕のある湊ではなくて、どこか純粋無垢な青年のようにも見えて、夕妃の胸は締め付けられる。
(きっと……私がなにも口に出せないからだ)
夕妃とコミュニケーションを取るために、いつも以上に自分の心をさらけ出しているからだ。
それが彼の【優しさ】でなくてなんだろう?
その瞬間、夕妃の目からポロリと涙が零れ落ちた。
愛おしいと思うような、切ないと思うような、不思議な涙だった。
だが、天井を見上げている湊は気づかなかったようだ。
ホッとしつつ、夕妃は指先で涙をぬぐった後、うつむいてメモに文字を書きつけた。
【そのままでいい】
【優しさはひとそれぞれ】
【人と違っていい】
【湊さんは湊さんの方法で人を幸せにしています】
そこまでは一気に書いて――そして迷いながら最後に一言、付け加えた。
【私はそんなあなたが好きです】
そしてメモを破って、湊の膝の上に乗せて立ち上がった。
「――夕妃さん?」
メモを膝にくっつけたまま、湊が夕妃を視線で追いかける。
(おやすみなさい)
少し恥ずかしかったのもある。夕妃は笑顔を浮かべたあと、ペコッと頭を下げ、そのまま急いで二階の階段を駆け上がっていた。