イジワル社長は溺愛旦那様!?
(昨晩は大胆なことをしてしまった……)
朝、目覚めた夕妃は顔を洗い、身支度を整えたが階下に降りられないまま、ベッドに腰かけて、両手で顔を覆っていた。
自分から異性に好きだなんて伝えたのは生まれて初めてだった。
もちろん夕妃も、過去に淡い恋だってしたことがあるが、しょせん子供の恋だ。
女友達同士で、あの先輩がかっこいいとか、いや、私はあっちの先輩のほうがいいとか、盛り上がって。
その流れで、夕妃としては予想外だったのだが――ちょっといいなと思っていた先輩のほうから告白されて、舞い上がった。
アイドルを追いかけているような気持ちだったのに。一気にその空気に、恋をしてしまった。
だが結局、先輩が高校に進学して、自然消滅してしまった。
恋に恋しているのだから、そんなものなのだろう。
お互いに歩み寄ろうとか話し合おうとかそんなことにはならずに、離れる気配だけを敏感に察知して、お互いがすうっと距離を取る。
そんなことを数回繰り返して、夕妃は大人になり、気が付けばこんなことになっている。
(でも、いつまでもここで頭を抱えているわけにはいかない……)
時計を見ると、朝の七時だった。
夕妃はぱちんと両手で頬を叩くと、気合を入れてベッドから立ち上がり、ドアを開ける。
すると階下からふんわりとコーヒーの匂いが漂ってきた。