イジワル社長は溺愛旦那様!?
(湊さん、起きてる……いやでも、普通に、平常心で!)
何度も深呼吸を繰り返し、少し意識して、足音を立てながら夕妃は階段を降りる。
気遣いながらキッチンのほうに向かうと、シャツにスラックス姿の湊が、ちょうどコーヒーを淹れているところだった。
「おはようございます、夕妃さん」
(おはようございます、湊さん)
夕妃は心の中でそう言いながら、ペコッと頭を下げる。
「コーヒー、ちょうどいま淹れたところなんですよ。飲みますか」
湊はにこやかに微笑んで、うなずいて近づく夕妃のために新しいカップを取り出し、コーヒーをそそいだ。
(昨日と同じ……)
昨日はまだ夜明け前だったが、キッチンに並んで立ってコーヒーを飲むのは、朝を迎える作業として、いい区切りな気がする。
【いつもこうやって窓の外を見ながらコーヒーを飲んでいるんですか?】
カウンターの上でメモを書くと、湊はそれを見てうなずいた。
「ええ。キッチンでコーヒーを淹れて、飲んで、そのまま食洗機という流れがかれこれ二十年ほど」