イジワル社長は溺愛旦那様!?
湊を見つめている夕妃の目に涙がうかんだ。
なんと説明していいかわからない感情が、夕妃の心でうずまく。
気を緩めると、声を上げて泣いてしまいそうだった。
(私、湊さんといるといつもこんな気持ちになる……)
ただ寄り添いたくて、抱きしめたくて、けれどこの状況ではそんなこともできず、夕妃は膝に掛けられていた湊のスーツの上着をぎゅっと胸に抱きしめていた――。
湊が目を覚ましたのは、それから一時間後くらいだった。
「ん……」
かすかに声をあげて、それから目を開けた湊は、ハッとしたように体を起こして、隣の夕妃を見下ろした。
「えっ、俺、寝てたっ!?」
明らかに素だ。
それまでうとうとしながら湊にくっついて座っていた夕妃は、珍しいものを見たと思いながら、うなずいた。
「やばっ……ああっ、もうこんな時間だ! 電話、店に行く前に連絡、いれるっていったのに……してない……ああ……」
時計の針は夜の九時を回っていた。
今から出たとしても、こうなると食べられるのは十時近くにはなってしまうだろう。
「ああ……失敗した……ソファーに座ってからほぼ意識がなくなってしまって……」
湊は何度もため息をつき眼鏡を指で押し上げながら、ソファーから立ち上がる。
すると彼の膝から夕妃のジャケットが滑り落ちて、湊はハッとしたようにそれを拾い上げ、目を見開いた。