イジワル社長は溺愛旦那様!?
(ええーっ、そんな話どこから出てきたの?)
聞いたこともない話に、リップブラシで口紅を塗りなおす夕妃の手が止まる。
おそらく奥に社長秘書である夕妃がいるとは気づいていないのだろう。
ふたりのおしゃべりは止まらない。
「なんでも海外の営業統括に抜擢されるんじゃないかって」
「せっかくの目の保養がいなくなるなんてショック!」
「だよねー。とは言っても、ここだってまだ立ち上げて一年かそこらだし、早くても来年以降なんじゃない?」
「本当に戻されるんだったら、社長に玉砕覚悟で告白する女子社員多そうだわ」
「あんたも?」
「ふふっ、それもありかもね。彼女になれなくても、一度抱いてもらえたら、いい記念になりそうだし」
彼女たちは楽しげに笑って、そして出て行った。
(玉砕覚悟で告白なんて……しないでほしいんですけど!)
夕妃は憤慨しながらパウダールームを出る。
もちろん湊が、ほかの女性に告白されたりして、よろめいたらどうしようなんて本気で思っているわけではない。
(それは湊さんにとても失礼だもの)