イジワル社長は溺愛旦那様!?
すると閑も夕妃にしっかりと向き合って、会釈した。
「初めまして。ご紹介にあずかりました、湊ちゃんの弟の、神尾閑です。ちなみにシズカって名前は今度こそ女の子が生まれたらいいなーという母親の切なる願いと、そうではなかったので、せめて静かに育ってほしいという願いからつけられました。ですが兄弟で一番のおしゃべりに育ち、今はしゃべりを仕事にする弁護士です」
滑らかな自己紹介はユーモアに満ちていて、緊張していた夕妃の肩からふっと力が抜ける。
(私があからさまに緊張してるから、気遣ってくれたのかな。優しい人だな)
にっこりと笑う夕妃を見て、閑もまた愛嬌たっぷりに微笑む。
「兄からだいたいのことは聞いています。不安があって当然だと思いますが、俺はあなたの味方ですよ。だから安心してくださいね」
その言葉を聞いて、夕妃は今度は落ち着いて、エプロンからメモとペンを取り出した。
【ありがとうございます。頼りにさせてください】
そのメモを受け取って、閑は目を丸くする。
「字がきれいだなぁ……ちなみに俺は金釘流免許皆伝で、事務所では神尾先生の字を判読するのに、別途料金を貰いたいって言われる腕前です」
要するにものすごく字が下手だということらしい。
そしておしゃべりだというのも本当らしく、湊がキッチンでお茶を淹れ始めるのを見て、「濃い目に淹れて!」とソファーから叫び、湊にうるさがられていた。