イジワル社長は溺愛旦那様!?
新婚旅行の予定は、奇しくも湊の両親がいるハワイだった。
「――」
【湊さん?】
みるみる固くなる湊の表情に、夕妃は尋常でないくらい緊張していた。
もしかしてこれはとても大事なことだったのだろうか。
正直、朝陽を置いてハワイになんか行きたくなかったのであまり考えないようにしていたのだが――。
だが次の瞬間、不安に揺れた夕妃の体を、湊はソファーの上で抱き寄せていた。
「よかった……」
耳元で安堵したような声が響く。
(え……?)
「今さらながら、ホッとした。あなたがほかの男とハネムーンに行かなかったことも、婚姻届を出さなかったことも……まるで神様が俺にくれた奇跡じゃないか」
(湊さん……)
「本当に、俺は幸運に恵まれたと思うよ。人妻になる前のあなたに出会えて、本当によかった」
湊は何度も何度も、よかったとささやいて、それから夕妃を抱きしめる腕に力を込める。
(湊さん……どう考えても面倒ごとばかりなのに、「よかった」って言ってくれるんだ……)
湊の言葉が嬉しくて、夕妃の胸にあたたかいものが広がっていく。
愛されている――。
自分はこの人に本当に必要とされているのだ。