イジワル社長は溺愛旦那様!?

「それから、湊さんが、朝陽くんの夏休みに、三人でハワイに行こうって」
「おおー、初海外、初ワイハー」


卵を割る手を止めて、朝陽が奇妙なダンスを踊る。フラダンスのつもりらしい。
百九十超えの朝陽が踊るとそれだけで妙に笑えてしまう。
夕妃はクスクスと笑いながら、首を振った。


「湊さんの、ご両親に、会いに行くんだよ」
「わかってるって。でも楽しみじゃん」
「……うん。それは、楽しみ」


湊も仕事が忙しいし、朝陽も推薦予定とはいえ一応受験生だ。そう長い滞在はできないが、生まれて初めての海外旅行なのだから、夕妃だって楽しみだ。朝陽がワクワクしてしまうのは当然だろう。


「あ、湊さんのぶん、とっとかなきゃ」
「ええー、俺の取り分が減る~」


そう言いながら、朝陽はプリン液を、先に作ったカラメルが入った、耐熱のコップに注ぐ。そして残りを大きめのグラタン皿に注いで、お湯を満たしたフライパンの中に淹れ、火にかけ蓋をした。
十分火にかけて、放置。それから冷まして冷蔵庫に入れる。簡単プリンだ。
これも、ホットケーキほどではないが、よく作った懐かしの味だった。



湊が帰宅して、三人で夕食を囲み、彼にもプリンを食べてもらってあれこれとおしゃべりをする。緩やかに時間が過ぎていく。

「おやすみ」と最初に言って立ち上がるのは朝陽だ。健康優良児の朝陽の夜は案外早い。

それから夕妃も、湊に手を引かれて彼のベッドルームへと向かう。



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