イジワル社長は溺愛旦那様!?

「……夕妃」


何度かキスをしたあと、上半身を起こした湊の両足の間にすっぽりとおさまって、彼の胸に体を寄せていた夕妃は、名前を呼ばれて顔を上げた。


「声がでるようになったら働きたいと言ってたね」
「うん……」


今すぐは無理だとわかっているが、できれば働いて社会と関わっていたい。

自分で働いたお金で朝陽に洋服を買ってあげたりしたいし、思い立ったときに、湊にちょっとしたプレゼントを買ったりしたいというのが、夕妃の希望だ。


「案外その日は早く来るかもしれないよ」
「ほんとう……?」
「ああ。声、だいぶ出るようになっただろう。あなたは本当に努力家だ」


湊は優しく微笑んで、夕妃の首筋を優しくなでる。

手のひらで体を撫でると、筋肉をほぐす効果があるらしい。これも治療のひとつだ。それを聞いて、湊は寝る前、ベッドの中で、必ずこうやって夕妃の肩や首を撫でてくれるようになった。

そうやって撫でられているうちに、夕妃はすとん、と落ちるように眠ってしまうのだ。


(撫でられて寝てしまうなんて、猫か犬みたいだけど……)


< 254 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop