イジワル社長は溺愛旦那様!?
それは皮の赤い手袋で、目に入れても痛くないほど可愛がっている弟が、夕妃の就職祝いで贈ってくれたものだった。
「落ち着いて、考えてみて。最後に使ったのはいつ?」
恭子の言葉に、夕妃は視線を宙にさまよわせた。
「えっと……ランチで出かけたときはつけてました」
「帰りは?」
「うーん……つけたような、つけてなかったような」
あつあつのランチを食べて体が温まっていたから、手袋はつけなかったような気もする。
「じゃあとりあえずそのお店に連絡してみたら?」
「そうですね。そうします」
恭子の言うことはもっともだ。
夕妃は財布からレシートを取り出した。
受け取ったレシートに店の名前と電話番号が書いてあった。
「チェーロ……電話番号は……」
スマホを操作して番号を押すと、数コールで元気のある女性の声が聞こえてきた。
【はい、チェーロです!】
「お忙しい時間に、すみません。今日ランチの時間に、赤い手袋の忘れ物はなかったでしょうか?」
【赤い手袋ですね。少々お待ちください】
そして電話が保留になる。