イジワル社長は溺愛旦那様!?
「……一緒には? 一緒には、住めないのっ?」
「ははっ、それは無理でしょ。あんた、俺に抱かれてよがる声、弟に聴かれたいわけ? そういう趣味があるの?」
「っ……!」
桜庭の吐く悪意に思わず悲鳴が漏れそうになるが、唇をかみしめた。
「てか、なにその反応。まさか処女でもあるまいし――って。もしかして処女なの」
「それはっ……」
みるみるうちに、夕妃の顔が赤く染まっていく。
そんな自分の表情を見られたくなくて、慌てて顔をそむけた。
「うわっ、マジか。今どき珍しいな……引くわぁ……」
引く、といいながら、桜庭は急にご機嫌になった。
「あ、だったら結婚式当日まで、あんたを抱くのはやめよう。せっかくだから、結婚式が終わったら、ウエディングドレスを着たままのあんたを抱くことにしよう。せっかくだからビデオカメラで撮影して……あんたが逃げ出さないように、保険として撮っておこうかな? あ、興奮してきた……ふふっ……やばいな……こんなに楽しい気分になったのは、久しぶりだ」
どう考えても、正気の沙汰ではない。
撮影なんか、冗談だと思いたかった。
だが、自分を押し倒したまま楽しそうに笑う桜庭を見ていると、もしかしたら本当にそんなことをするかもしれないと、すさまじい恐怖を覚えた。