イジワル社長は溺愛旦那様!?
桜庭はそんな夕妃を愉快そうに見下ろしていたが、それからふと、真顔になって桜庭はささやく。
「あんたには自分の意志なんて必要ない。死ぬまで黙って、俺にひざまずくんだよ、いいね、夕妃」
そして大きな手で、首をつかむ。
「……っ」
息ができないほどではない。力は入っていない。
でも、なぜだろう。声が出ない。
「返事は?」
桜庭は返事を要求する。
押さえつけられているせいか、頭がぼうっとし始めてきた。
――自分の意志なんて必要ない。我慢して、服従して、ひざまずいて……死ぬまで黙って……。
頭の中で、ガンガンとおかしな音が響く。
「は、い……」
気が付けば、夕妃は呻くように答えていた。
そして日々、桜庭麻尋は夕妃への支配を強めていった。
あっという間に、ふたりの婚約が決まり、結婚式やハネムーンの日取りもきまっていた。
桜庭麻尋は、押しは強いが人前では明るく人懐っこい姿勢を崩さなかった。
夕妃との婚約も、周囲にはかなり驚かれたが、
「結婚ってタイミングだよねー」
と笑って、いたって普通だった。