イジワル社長は溺愛旦那様!?


――――

――



記憶が一気に、波のように押し寄せてくる。


「あっ……!」


夕妃はキーボードに顔を突っ伏して、叫んでいた。

宅配を受け付けたメールが届いたが、開くこともできなかった。


「はっ、はっ、はっ……!」


胸が苦しい。
息ができない。吸えない。吐けない。

出来るだけ、考えないようにしていたはずなのに、桜庭麻尋のことを思い出してパニックになる。


(落ち着いて、落ち着いて……っ……)


そう自分に言い聞かせるが、今度はグラグラと地面が揺れ始めた。


ぎゅうっと胸のあたりをつかみ、うずくまる。
首の後ろから背筋にかけて全身がこわばっていく。

まるで全身に毒が回っていくような気がした。

それは桜庭麻尋の“呪い”だ。


(助けて……っ……)


とっさにテーブルの上に置いてあったスマホを引き寄せて、湊の番号を表示しタップする。
すぐにコール音がし始めるが、ハッとした。彼は仕事中だ。


(だめだ、こんなの、迷惑かけちゃう……!)


すぐに電話を切断したが、着信に気が付いたらしい湊から、すぐに折り返し電話がかかってきた。

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