イジワル社長は溺愛旦那様!?
夕妃は怯えながら、湊を見つめ返す。
漠然とした不安が夕妃を包む。
「まず、俺を信じてほしい……そして俺を好きな自分を許してあげないか」
「あっ……」
「夕妃は俺に守られて、安心していいんだよ。人に頼るのはなにも悪いことじゃないんだ」
その瞬間、夕妃の胸の奥に押し込めていた感情が、爆発する。
湊はなにもかもわかっているのだ。
好きと言われて嬉しくても、不安になって。
守ると言われても、心のどこかでこれ以上迷惑を掛けたくないと、躊躇してしまう。
自分が我慢すればいい、たいしたことはない、大丈夫だと言い張ってしまう。
いつだって百パーセント自分を、許すことができない。
そんな自分のことを、わかっていて、それでも黙って見守ってくれていたのだ。
夕妃を支配していた桜庭麻尋という男がどんな男なのか。
そしてどんな風に夕妃を縛り付けていたのか――。
考えて、時にはいらだつこともあったに違いないのに、夕妃を傷つけないために、繰り返し、いつも大丈夫だと、ささやいて。
抱きしめて、キスをして眠ってくれた。
自分は湊の穏やかで優しい愛情にこんなにも守られていたのだと、ようやく気が付いて、胸が締め付けられ、鼻の奥がツンと痛くなった。