イジワル社長は溺愛旦那様!?

夕妃は怯えながら、湊を見つめ返す。

漠然とした不安が夕妃を包む。


「まず、俺を信じてほしい……そして俺を好きな自分を許してあげないか」
「あっ……」
「夕妃は俺に守られて、安心していいんだよ。人に頼るのはなにも悪いことじゃないんだ」


その瞬間、夕妃の胸の奥に押し込めていた感情が、爆発する。

湊はなにもかもわかっているのだ。
好きと言われて嬉しくても、不安になって。
守ると言われても、心のどこかでこれ以上迷惑を掛けたくないと、躊躇してしまう。
自分が我慢すればいい、たいしたことはない、大丈夫だと言い張ってしまう。
いつだって百パーセント自分を、許すことができない。

そんな自分のことを、わかっていて、それでも黙って見守ってくれていたのだ。

夕妃を支配していた桜庭麻尋という男がどんな男なのか。

そしてどんな風に夕妃を縛り付けていたのか――。

考えて、時にはいらだつこともあったに違いないのに、夕妃を傷つけないために、繰り返し、いつも大丈夫だと、ささやいて。
抱きしめて、キスをして眠ってくれた。

自分は湊の穏やかで優しい愛情にこんなにも守られていたのだと、ようやく気が付いて、胸が締め付けられ、鼻の奥がツンと痛くなった。


< 286 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop