イジワル社長は溺愛旦那様!?
その日の夜、朝陽と湊と三人で、朝陽の入寮と、結婚前日記念日のお祝いをした。
朝陽は夕妃の声がすっかり出るようになったことにまず驚いた様子だったけれど、なにかを察知したのか、わざわざ問いただすことはしなかった。
ローストビーフをメインに、テーブルに乗り切れないほどの料理を食べ、さらにデザートには朝陽念願のホットケーキを焼いた。
もう食べられないとわぁわぁと騒ぎながら、焼いたホットケーキをタワーのように積み上げ、はしゃいで、笑って。
あんまりにも楽しくて、別れがつらく、涙も出たけれど、本当に素敵な夜だった。
「――朝陽くんと眠らなくてよかった?」
「そこまで……ブラコンじゃないです」
夕妃は唇を尖らせながら、本を読んでいる湊の隣に体を滑り込ませる。
時間はすでに深夜十二時をまわっていた。
三人だけのパーティーは楽しかったが、終わってしまうと急激に寂しくなる。
湊はクスッと笑って、そのまま夕妃の肩を抱き寄せた。
呼吸でゆるやかに上下する、彼の広い胸に頬を押し付ける形になった。
ドクン、ドクンと心臓の音が聞こえる。