イジワル社長は溺愛旦那様!?
(あったかい……おちつく……)
なにを読んでいるのかと彼の手元を覗き込むと、英語だった。
「……読めるのですか」
「読めるよ。というか、その変な敬語なに? カタコトだし」
「緊張して……て」
やっと普通に意思の疎通ができるようになって、今まで心の中やメモや、つたない言葉であれこれ彼に向かって話していたことを思い出すと、妙に構えてしまうのだ。
「緊張、ねぇ」
湊は読みかけの本を閉じて膝に乗せると、どこか楽しそうに夕妃の顔を見下ろした。
「ついに抱かれる日が来たと、緊張してるってこと?」
「そっ……それはっ……ちょっとだけ……」
「ふぅん……ちょっとだけなんだ?」
湊はどこか意地悪そうに問いかける。
「いや、だいぶ……」
そして夕妃は、ぎゅっと湊の胸に額を押し付けた。
(彼の顔をまともに見れる気がしないよ……)
声が出たら――ふたりの一線を越える。
湊は最初から一貫してそう言い続けていたのだ。
「夕妃……」
湊はかけていた眼鏡を外す。
そして夕妃の顔に顔を近づけて、囁いた。
「愛してるよ……」
湊の柔らかい唇が額に触れる……。