イジワル社長は溺愛旦那様!?
「だって、仕事が終わらなくて……」
「誰だよ、俺の奥さんにそんななかなか終わらない仕事振ったやつは」
「あなたでしょ?」
夕妃が苦笑すると湊が微笑む。
「そうだった」
けれど湊はごめんねとは言わない。
あれが夕妃の仕事だからだ。
(そういうところが、好きだなぁ)
そんなことを考えながら、夕妃は彼を見上げた。
三つ揃えを脱いで黒のセーターとデニムに着替えた神尾湊は、眼鏡も仕事中のメタリックフレームからカジュアルなセルフレームに変えていた。
シンプルな装いだが背が高く、スタイルがいい湊にはよく似合う。
プライベートでは、マーケティング会社の社長というよりも、デザイン関係の仕事をしているといったほうがハマる雰囲気だ。
「おかえり」
湊は改めてそう言うと、夕妃の首元にグルグルと巻かれたマフラーを取り、それからコートのボタンを上から一つずつ外しながら、夕妃の顔を覗きこんだ。
「夕妃、おなか空いてる?」