イジワル社長は溺愛旦那様!?
「お昼が遅かったから、そうでもないかも」
「じゃあ一緒に風呂に入ろうか」
コートのボタンをすべて外し終えた湊の指が、今度はジャケットへと移動した。
神尾湊、三十三歳と、夕妃、二十四歳は夫婦である。
職場では旧姓の三谷を名乗っているが、入籍は済ませ、もちろん双方の家族や関係各所には挨拶済みだ。
だがふたりの関係がバレてしまわないよう、夕妃は表向きエールの人材派遣会社を通して、エールマーケティングに派遣されている。
諸所の事情があり、こういうことになっているのだが、夕妃にとっては些細なことだ。
なによりも大事なのは、夫婦がこうやって一緒にいられることなのだから。