溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「無理に話そうとしないで。黙っていてもいいし、聞きたいことがあるなら聞いてくれてもいいから」
「はい」
高速道路から湾岸エリアを臨むようになると、鼻歌を挟んで社長がハンドルと握っている。思わず頬が緩んで、無言だった数分を打ち破りたくなった。
「運転しながら歌うんですね」
「……え?あ、いま歌ってた?」
無意識だったらしく、恥ずかしそうにする社長の端正な横顔に目が留まる。
ドリンクホルダーにはミルクティーのペットボトル。
嫌煙者だから、眉をひそめたくなる匂いはしない。時折感じる清潔感のあるほのかな香りは、おそらく柔軟剤だと思う。
何を考えているかわからない謎めいた人だけど、世間ではクールと言われている葛城亜緒という人の、可愛らしい一面を見てしまった。