溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

 社長がハッキリしないから、巻き込まれたじゃない。
 私に告白してみたり、雨賀碧とキスしてみたり……冗談でプロポーズするような彼らしいとは思うけど。

 本当に何もないなら、関係を否定すればいいのに。



 取材が終わり、一行が社を去った後、忘れ物に気づいて社長室の前に立った。
 ガラス張りの50階からは、夏の太陽に照らされた高層ビル群がくっきりと見える。こんな立派な自社ビルを建てて、社の業績も右肩上がりを保ち続けるなんて、社長の有能ぶりを形で見せられているみたいだ。苦労をしているのは社長も社員も同じなんだろうけど、彼の場合はそれを誰にも見せたりしない。




 ノックをして、返事を待ってからドアを開けた。


「すみません。忘れ物をしてしまいまして」

「これ?後で届けようと思ってたんだけど、気づいてよかった」

「ありがとうございます」

 ごく普通に社長と会話をするけれど、彼の隣にはなぜか雨賀碧がいる。帰ったはずの彼女が未だ残っていたとすぐに察して、1歩後ずさるように脚を引いた。



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