溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「お仕事中にごめんなさいね。早く帰ればよかったんだろうけど、亜緒くんに話があって」
一礼して去ろうとしていたのに、彼女が先手を打つ。
「本日は取材のご協力ありがとうございました。私はこれで失礼しますので、どうぞごゆっくり」
「ええ、そうさせていただくわ。せっかく亜緒くんと会えたんだもの」
ほとんどの人が社長を名字で呼ぶのに、彼女だけは名前を口にする。
それを咎めない彼も、にこやかにしていて、やっぱり特別な関係があるのだろうと思った。つき合っていないのは今だけで、恋愛の曖昧な距離感を楽しんでいる最中なのかもしれないし……雨賀碧なら、そういう駆け引きも似合う。
「私、亜緒くんの気持ちを大切にしてほしいなって思うの」
社長室のドアを閉める寸前で漏れ聞こえた声に、私は動きを止めた。
聞く気はなかったのに、聴覚が彼らの声に反応してしまう。