溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 最寄で下車し、気を取り直す。シャキッと背筋を伸ばして駅構内を歩けば、周りはまるで軍隊のようにいそいそと歩く社会人ばかり。その波にのまれまいと、ハイヒールを鳴らして負けないように踏み出した。




 ブルーメゾンの社屋は、下層階と中層階、上層階それぞれに直通するエレベーターが設けられていて、朝は行列ができる。


『おはよう。出社したら、社長室まで来てください』

 列に並んでいると、葛城社長から絶妙なタイミングでメッセージが届いた。
 言われなくても分かる、呼び出しの理由。目にした記事のことだろうと察しがつくけれど、私よりも雨賀碧から色々と聞いているのは社長のほうだろう。




「朝から申し訳ないね。すぐ済むから、ゆっくりして」

 社長は静かな朝を迎えた様子を感じる。
 私の焦りや不安なんかとは真逆の、小鳥のさえずりが似合うほどの静かな時間の中、淹れられたコーヒーにミルクを入れて、自身を落ち着かせようとかき混ぜた。


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