溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~



 誕生日でも世の中は平等に時間を回す。

 昨夜、誰にも知られてはいけない“社長との秘密その2”を抱えさせられた私は、帰宅してからも悶々としていた。

 そして、行き着いた答えは、社長がどういうつもりなのか、確認させてもらう権利はあるということ。
 振った振られた関係なく、屋上の件も昨日のことも、その意図を知る権利は私にしかない。




「おはようございます。昨日はありがとうございました」

「おはよう。新しい1年も素敵な時間に満ちているといいですね」

「はい。ありがとうございます」


 9時10分。始業時間まではまだ余裕がある。
 社長が何時に出社しているのか知らないけれど、大きなデスクにバッグが置かれているのを見る限り、来たばかりなのかもしれない。



「お忙しいと思いますので、用件だけお話させていただいても構いませんか?」

 どうぞ、と言いながら、淹れたてのコーヒーを手に椅子に座った社長が私を真っ直ぐ捉える。


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