溺甘プレジデント～一途な社長の強引プロポーズ～

　何があっても、社長は社長で、私は数多いる社員の１人でしかなかった。

　先週、自分の想いに気づいてしまってからというもの、彼がそこにいるだけで１歩踏み込んでくるような存在感を放つようになってしまった。
　もちろん、それは社長が操作したわけではなく、私の気持ちのせい。

　だけど……どうにも意識してしまう。



「どうしたの？ぼーっとしちゃって」

　恒例のランチタイムに、社食で乃利子たちと集まっていると、社長がごく普通に他の社員と並んでトレーを手にしているのを見つけた。


「社長っていつも社食だった？」

「いつもじゃないと思うけど……週に何回かは見ることもあったかな」

「いいよね、葛城社長って」

「私も同意。葛城社長ほどのいい男って、やっぱり合コンには転がってないんだもん」

「そりゃそうでしょ。少なくともあの若さで一部上場企業の社長で、自社ビル保有してるとか、だいぶ条件狭いからね」


　私が１つ質問すれば、彼女たちは勝手に盛り上がりはじめる。
　今まではどうでもいいと、大半を聞き流していた彼女たちの話にも、自然と耳が向く。