呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。

桜木さんを促しながらマンションの中へ。
ありったけの勇気を総動員させたお誘いはありがたくも受け取ってもらえた。

大丈夫。
自惚れたりしない。


「ワンルームなんで狭いですが、どうぞ」

「なんかごめんね、お邪魔します」


私の部屋に、桜木さんが居る。
ほんの一時間前には思いもしなかった急展開に動揺するなという方が無理だろう。

それでも、と表面上は必死に冷静を装う。


大丈夫ですよー。
取って食ったりしないですよー。
勘違いなんてしてませーん。


そんな気持ちを全面に出す。


簡単に男をあげる女だとは思われたくないが、これほどのイケメンさんは逆にがっつく女には辟易しているであろう事を予想して、なるだけ無害を装う。
だって、警戒されたりしたら嫌だもん。


そう思っていても恋する乙女のテンションは無駄に上がる。
それはもう仕方ないじゃん!


「適当に座ってください。お茶でいいですか?あっ、おでん温め直しましょうか」

「お構い無く。お茶も買ってあるし。おでん、このままでもまだ大丈夫だよ」

「えっ?でも買ってたのコーヒーでしたよね?」

「えぇ?あ、本当だ……」

「ぶっ、あはははは。じゃあ、お茶は我が家のを飲んでください」

「はぁ、なんかごめんね。ありがたく戴きます」


昔懐かしい卓袱台のような小さな机の上で買ってきた袋を覗き混みながら頭を垂れる桜木さんが、凄く可愛くて。

涙が出るほど笑って、にやけた顔を誤魔化した。

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