呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。
ふいに訪れた沈黙に、ぎこちなく桜木さんが腰をあげる。
「じゃあ、そろそろ。こんな時間にごめんね」
「いえ……お構いも出来ずにすみません」
「いや、容器を分けて貰わなかったの僕だしね」
ふっ、と小さな笑みを見せると飲みかけのコーヒーを鞄に入れて、立ち上がった桜木さんにコートを手渡す。
「ありがとう」そう言って受け取ってくれたそのコートの端を思わず握りしめ、ん?と首をかしげられた。
完全に無意識だ。
「ご、ごめんなさいっ、、」
慌てて手を離すと、頭に感じる温かなぬくもり。
えっ?と思って見上げると桜木さんが柔らかに笑って頭を撫でてくれていた。
瞬間湯沸し器のように顔に熱が溜まる。
あぁ。今絶対顔赤い!
嬉しくて、幸せで、泣きたくなった。
これきりにしたくない。
振られる可能性のが高いけど、あと一歩踏み出すきっかけにはなったんだ。
私に触れてくれた。
それだけで。