誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
晴れ渡る青空を余すことなく映し出し、泉はキラキラと輝いている。
怒っていたことも忘れ、あいなは引き寄せられるような足取りで泉に近付いた。近くで見ると透明の美しい水が涼しげな音を立てているのが分かる。中央が噴水になっていた。
「エトリアの泉だ」
シャルがあいなの頭をなでた。
偉そうで威圧的だったこれまでの言動とは裏腹にシャルの手の動きは優しく包み込むような触り方で、あいなは息をのんだ。同時に耳が熱くなるのを感じる。
「なっ!誰に許可取って人の頭なでてんの!?」
恥ずかしさのあまりぶっきらぼうな言い方になる。
一方、シャルは落ち着きを取り戻したようで、余裕の笑みを浮かべ「未来のお前が許してくれた」と、つぶやいた。
その声音が思いのほか優しくて、シャルらしくない。頭のなで方がソフトなのもあいまって、あいなは反発心を削がれてしまった。
「未来の私に許可をもらった?なにそれ。ホント、シャルってテキトー……」
「本気なんだが、このニュアンス、お前にはまだ伝わらないか」
すっかりしおらしくなってしまったあいなにホッとしたのか、シャルはようやく、あいなをここへ連れてきた理由を話した。
「さっきも言ったが、これは、エトリアの泉だ」