誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
指輪に込められた魔力のことを、あいなは思い出す。
「じゃあ、この泉にも何かの魔力があるの?」
「さあな、それは分からない」
「なんだ。つまんないの……」
相手がシャルということもあり、あいなは遠慮なく言いたいことを言う。これが恋の相手だったら、もう少し優しい物言い、柔らかな表情になったのであろうが。
あいなの露骨さに気分を害することもなく、シャルはむしろ安心したような顔で。
「お前はそう言うと思った」
「私のことよく知りもしないクセに」
「そうだな」
あいなのため息まじりな返しに、シャルは鼻で笑うだけである。珍しく言い返してこないシャルに対し、これはこれで何か良くないことの前触れに思え、あいなは眉をひそめた。
「真実は分からないが、この泉にはある伝承が残されている」
「え!?」
渋い顔を明るくし、あいなは話に食いついた。
「『泉の水面に己の姿を映した者に、最良の伴侶との出会いをもたらす』とな。俺は、物心つくかつかないかという頃からこの泉を見つめ、水面に自分の姿を映していた。伝承は本当だったんだな」
「ちょ、ちょっと待って!?その伝承が本当かどうかは置いとくとして……。シャルは私のことを自分にとって最良の妻だと思ってるわけ?」
「ああ」
シャルの目には、嘘や迷いなど微塵もない。初対面であいなにプロポーズした時から彼はこうだった。良くも悪くもブレていない。