誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
あいなは大きくため息をついた。この世界へ来て何度目のため息か分からない。
これも泉の追加効果なのか、さきほどのようにガミガミ怒る気にはならない。しかし、やはり、あいなはシャルの考えを理解するのに苦しんだ。
「どうして、自信持ってそんなこと言えるの?私達、お互いに知らない者同士なのに……。私は、好きな人と両想いになって、お互いのことをよく知って、普通の恋人同士みたいに愛を育んで、それから結婚したかったよ。……その相手はシャルじゃない。好きになった人じゃなきゃ、意味ないの」
シャルに対して、初めてこんなに落ち着いて話せた気がする。ケンカ越しでも反発的でもない、大人な対応。あいなは、今の自分を自分でほめてやりたい気持ちになった。
意外にも真剣にあいなの話を聞いていたシャルは、「お前の考えは分かった」とうなずきつつも、次の瞬間には「でも」と、反対意見を述べた。
「順番って、そんなに大事か?」
「えっ?」
「お前としては、好きなやつを作る、交際、その末に結婚って流れが理想みたいだが、逆でもいいだろ?」
「『いいだろ』って、簡単に言うけど、結婚して好きになれなかったらどうするの!?」
「お前はポジティブな性格だろ?なのに、変なところで後ろ向きだな」
「私のこと全部知った風に言うのやめてよねっ」
「……とにかく、お前は近々俺の妻になる。それはくつがえせないことだ」
「むぅ……。いいもんね。アンタに嫌われてやるから」
それ以上言い返しようがなく、あいなはついに、ふてくされるという手段に出た。子供っぽくて情けないことこの上ないが、考え方が真逆な王子としゃべっていても、言いくるめられるのがオチである。