今夜、きみを迎えに行く。
放課後、茜は日課のように必ず一度はわたしのクラスに顔を出す。
「部活、行ってくるね。気をつけて帰って」
真っ赤な袋に入ったバスケットシューズを担いだ茜はいつも笑顔でそう言って、ひとりで帰るわたしを心配してくれる。
人気者の茜が、わざわざわたしにだけ、そんなことを言いに来てくれる。
それが、誇らしくもあり、くすぐったくもあり、余計なお世話だと言いたくなるときもある。
「どうせわたしは暇人ですよーっだ」
こんな風に憎たらしい台詞を返してしまった今日みたいなときでさえ、茜はそれにアハハと笑って、「じゃあね」と爽やかに去っていく。
綺麗で、優しくて、気取らない茜を、嫌う人なんてきっといないだろう。
だからこそ、わたしは茜なんかと幼なじみであることを不幸に感じてしまうのだ。