今夜、きみを迎えに行く。



茜のいない帰り道。


部活に入っていないわたしは、朝と同じ川沿いの並木道をゆるゆると、わざと時間をかけてこいでいた。


家に帰れば、母の小言を延々と聞くはめになる。



「勉強しなきゃ、どこの大学にも行けないわよ」


「部活もせずにふらふらとして、少しは茜を見習いなさい」


「何もすることが無いなら、あなたが家でおばあちゃんの世話をしてくれる。わたしは働きたいのに我慢してるの。あなたとは違うのよ」


「おばあちゃん、やっぱり施設に入れたほうが良いかもしれないわね。ねえ葵、あなたはどう思う」


あんなに仲の良い家族だったはずなのに、どこのお母さんより素敵な自慢の母親だと思っていたのに。


今の家族はとげとげしくて、言葉の端々に、見たくなかった親の本音が滲み出ていて。



帰りたくない。


そう思った。


気付けばわたしのこぐ自転車は、川沿いの並木道から外れた、知らない通りを曲がっていた。








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