今夜、きみを迎えに行く。
7*lavender
◇
祖母が亡くなったのは、ちょうど、その日の晩のことだった。
わたしが祖母に会いに行くと、祖母は珍しく酸素マスクを外していた。
病室のドアを開けると祖母がわたしを見て笑った。
久し振りに見た祖母の笑顔。
祖母に付き添っていた母親の目頭が、少し赤くなっている。よくわからないけれど、その顔から祖母の状態は良くないのかもしれないとわかった。
「おばあちゃん、葵だよ、わかる?」
祖母に顔を近付けて、顔を見せる。管の通った祖母の冷たい手を握ってみる。
「ぉ…あお…」
祖母が口を開いて絞り出すように声を出す。苦しそうだけれど、顔は笑顔で目はしっかり笑っている。
「…ぁお…」
「…うん、葵だよ、おばあちゃん」
祖母は横たわったまま頷いた。わかってくれている。そう思った。おばあちゃんの冷たい手は、骨ばっていて固かった。
昔はあんなにもふっくらとした、艶のある手をしていたおばあちゃん。
いつも誰かのために働いていた、おばあちゃんの手。
自分のことはいつも後回しで、家族のことばかり考えてくれていたおばあちゃん。
大好きなおばあちゃん。
一緒にスーパーに買い物に行くと、内緒でお菓子やたこ焼きを買ってくれたおばあちゃん。
わたしのことを、愛情たっぷりに育ててくれたおばあちゃん。