こっち向いて、ダーリン。【改訂版】
少し前の俺はケンカをしている時だけが生きていると実感できていた。

でも逢川が俺の周りをうろつくようになってからは、ケンカの数も格段に減った。

自分は今生きているとか考えること自体がなくなっていた。


俺にはあいつが必要だ。

あいつがいなければ、今の俺の日常は成り立たない。

流れていく時間をそのまま意味もなく過ごしていた日々には、戻りたくないと強く思う。


そう思えるようになったのも逢川の存在があるからだ。


俺がただ一つ求めていたもの。

どんなことがあっても俺を見捨てずに味方になってくれる人。


そんな奴、求めていながらいるわけがないと思っていた。

けど逢川はどんな悲惨な目に遭っても、俺を裏切ることはなかった。

逢川だけは、どんな時でも俺を見捨てず味方でいてくれた。


当初は本気で殺意を向けたのに、逃げるどころか俺から離れようともしなかった。

あいつが普通の人間と違うのか、それとも「俺のことが好きだから」なのか。

そこらへんは理解不能だけど、そのお陰で俺は逢川が信じられる人間だと思えた。


──逢川は俺がただ一つ、求めていたものなのだろうか。
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