完璧な彼は、溺愛ダーリン
葛木さんはくすんだゴールドのドアノブに手をかけながら、
「俺の行きつけの場所」
と、言って扉を開けた。
薄暗い店内。バーカウンターがあって、その奥にテーブル席が数席あった。
決して広くはない。
そのバーカウンターの後ろには、壁一面に様々なお酒が置いてある。
お酒に詳しくないし、大衆居酒屋で十分と思っている私はこういう店に少し気後れしてしまう。
葛木さんの行きつけって言っていたな。
こういうお店好きなんだ。大人だな。素直に感心してしまう。
「マスター」
「孝平くん、いらっしゃい」
カウンターに立っていたのは、白髪混じりの男性。
目尻に皺を寄せ、目を細める。黒のベストと白いシャツ。
温厚そうな雰囲気を持っているその男性は私を見ると、少しだけ目を見開いた。
「孝平くんが女の子を連れて来るなんて珍しい」
「はは、そうでしたっけ?」
「ええ、かれこれお店に来てから数年一度も見ていない気がしますよ」
「ちょっと彼女にはこの店を知って欲しくて、ね」
「そうですか。立ち話もなんですからどうぞ、お座りください」
「あ、ごめん。座ろうか」
そう言って、葛木さんは私をエスコートする。
椅子を引いてくれて、マスターの前に隣同士で座った。