完璧な彼は、溺愛ダーリン
葛木さんは私の手を引くと、すぐ近くにある階段を上がった。
それから車道へと周り停まっていたタクシーを拾う。
後部座席の扉が開いて、先に私を中へ入れると彼もすぐに乗り込む。
私の手をぎゅっと握りしめてから、運転手に行き先を伝えた。
深く座り直した後、葛木さんがちらっとこっちを見た。
「緊張してる?」
「……はい、してます」
「だよね。実は俺も」
「葛木さんもですか?」
平然としているように見えるんだけど。
これで緊張しているの?
いや、私が緊張し過ぎてて平常心じゃないのかもしれない。
「もちろん。今だって帰りたいっていつ言われるかヒヤヒヤしているよ」
「え、そんな心配してたんですか」
帰りたいなんて言わないのに。
照れ臭そうに鼻を掻いた後、視線を外へと移した葛木さんはぽつりと呟くように言った。
「やっと三石さんの彼氏になれたのに、その日に家に誘うなんて軽いとか思われていないかなとか」
デニム姿の葛木さんは、普段のスーツ姿の時よりも幼さが見える。
それでも濃いデニムに綺麗目のシャツを羽織っている彼を街で見たら、思わず振り返ってしまうと思う。
シンプルで、何か特別な事をしているわけでもないのに。
それがカッコよく映ってしまう。
そんな彼がそんな心配をしているだなんて。
どこかくすぐったくて、嬉しくて、私は口角を上げると口を開く。